今日、本を手に前兆を感じたひと時

Twenty years from now you will be more disappointed by the things
you didn't do than by the ones you did.
So throw off the bowlines away from the safe harbor.
Catch the trade winds in your sails. Explore. Dream. Discover.
 -Mark Twain

 今から20年後、君はやったことよりもやらなかったことに失望する。
 だから、もやい綱を解き放ち、安全な港から船を出し、
 貿易風をつかまえセイルしよう。
 探検し、夢を見、発見せよ!
  -マーク・トゥエイン

この文章が、巻頭に記された本が、今日届いたばかりの
Laird HamiltonのForce of Nature/ Mind, Body, soul, and, of course, Surfingだった。

様々な波乗りのスタイルで、とてつもないビッグウエーブに挑む、レアードの
超人的な身体、精神の強靭さの秘密とその為のトレーニングついて書かれたものだ。
この本の存在を知らせてくれた推薦してくれたのがレアード本人とも親交のある
マウイ在住のwaterwoman、岡崎友子さん(そして、きっと邦訳版を出してくれるはず!)
本からは壮絶さや臨場感が伝わる素晴らしい写真が並ぶ。
海の中で自らを研ぎすませてきた人の顔つき、身体が、すごく恰好良い。
と、話しをともにしていたのが、横山泰介さん、そして、白谷敏夫さん。

白谷さんは、泰介さんの写真集surfersをはじめ、Bueno Booksから出版されている
サーフアート本のアートディレクター。他にも、僕の大好きな書物である
アルケミストなど一般書籍でも素晴らしい本を多くてがけている。
アルケミストの物語の主人公のサンチアゴという少年には、思いっきり感情移入をし、
いくたもの困難を乗り越え、成長する姿に勇気をもらいボロボロ涙を滴らせた。
故郷を離れ旅で大きな変化に直面する前に現われるのが前兆だった。

海や山はもちろんだが、何か大きな変化が現れてくる前には必ずというほど前兆がある。
それに気づくようになるには、自分で失敗や困難を経験していくなかで、臭覚を
研ぎすますように磨くしかない。つながりや危険、あるいは展開を見るヒントかも
しれない。いずれにせよ、セットアップされた舞台の上や予定調和ですすむ環境に
いては身に付かないもの。「前兆」とはそういうものではないだろうか。

求めようが、求めまいが、常世に変化がやむことはない。だが自分のおかれた現実が勝手に
夢のように素晴らしいものへ変わることはない。現実にあるものを心に受け入れて、
そこでおこる大小様々な変化に、自分がどう対処していくか、だけではないだろうか。

自分ひとりだけの経験、失敗、旅・・・ではなく、他の人の経験、
それは地域、時代、そして思惑を越えて、伝えてくれるのが、本や写真の面白みだ。
写真であれ文章であれ、またドキュメンタリーであれ空想であれ、
世界を広げる思索に導き、そして、人が生み出したもの故に、
結局は現実へとつなげることができるものだ。

タイガー・エスペリが、屋久島の巨木の切り株にたつ写真を前に、
自分とタイガーのつながりを想った。

2000年7月に6人乗りアウトリガーカヌー(OC6)が、葉山大浜へ2艇ハワイから
降り立った。日本には初めてお目見えしたものだった。
日の出とともに、タイガーのチャントの後、葉山の海へと浮かべたカヌーに乗り、
カバを飲み交わした進水式。今も自分とカヌーがつながっている忘れもしない時間の
きっかけをつくってくれた人。

写真では、大きなタイガーが、なんとも小さくみえる。だが、人間ひとりの生は、
大いなる自然の上にあることが感じられて、安らかな気持ちになる。

天気予報に反して、青空が広がり、爽やかな陽光の差し込むテラス。
「これ、スティーブ・ペズマンの本の中で俺にとってのベストだよ」という白谷さん。
広げている写真集はRon Church CA/HI 1960-65。
「こんな本を並べて、買いにくるようなスペースにもなるよね。
その奥で、ゆっくり本でもつくって」
また何やら楽しいことのはじまる前兆だろうか(笑)