海を渡る -OCEAN LEGEND-
昨夜、葉山新港を出航したヨットが大島の岡田港脇に至ったのが今朝6時30分頃。
北東風にのっていくはずだったのだが、予想より早く風が変わり、西風へ。
強い潮流のために、大島へはなかなか近寄れず、波間に揺れる木の葉のように翻弄
されながら、ようやく到達したのがこの時間だった。
ナビゲーターの西村さんは、世界に誇る日本人セーラー。
やはりというべきか、指示やアドバイスは、すべてが的確だった。
出港前のクルー、ミーティングでのこと。
「最終的な実行の判断は、デュークが行うこと。それは、伴走船に乗るクルーすべての
安全を考えておこなうこと」
大島までの海は、時化そのもの。
同じ20ノットでも、日本の海の風とハワイの風ではセールのサイズが1サイズ、
違ってくるのだという。それは、湿度や温度のパランスからなる違いであり、
まさにこの近海の風は重く固い風だった。
しばらく、海の様子が好転することを待つ。
その間もデュークさんには寸分の迷いもみえなかった。
満を持したように、西村さんの「いつでもOKだよ」と。
島かげとなる沿岸は、波こそ静かだったが、崖の上から吹き下ろす風と、
西からの横風は威圧感が十分だった。
沖に待つ、僕らの方向に向かって勢いよく向かってくるが、
ほとんど右側しかパドリングができないようだ。
1時間をすぎたところで、真横だった風がやや後方へと回ってきた。
風も弱まってきていた。向きも進むべ方向へと後押ししてくれる。
身体のはりや足の痛みや疲労。何度か落水もあったが、ボードの上に這い上がり、
ひと漕ぎ、ひと漕ぎに魂を込めて、大海原をはしるデュークさん。
そんな姿は、本当に感動だ。クルーの誰も、目を離すことがなかった。
大型の本船に道を遮られたり、ハンマーヘッドがボードの下を通っても、
大浜へと向かうパドリングに迷いはなかった。
半分の距離をすぎたことを告げた時、「やった〜はやいじゃん」と、
笑顔で本当に楽しそうにパドリング。
やがて、ガスがかっていた先に見えた城ヶ島。
その付近に西へと流れていた潮流を抜けてからは、
風、うねり、潮流すべての向きが葉山へと向かっているようにもみえた。
それは、デュークの意志であり、陸地で待つ家族や仲間、皆の想いでもあるように。
7時間45分ほどで葉山大浜の砂浜へと上陸。
古の大海原を越えた民は、危険をかえりみずに航海へと出たのだろうか。
好奇心や冒険心よりも、先人たちが行き来した上で、
その海を越えた先に、よりよいものがあることを知っていたケースの
ほうがはるかに多いだろう。
では、未知なる旅へと人を誘うものがあるとすれば、
争いで拡散していったこともあるのだろうが、
きっと、より豊かな生活やハッピーな環境を求めて海を渡ったのでないか。
"OCEAN LEGEND"、このプロジェクトをすすめるにあたり、
常々デュークさん語っていたのがメッセージを伝えることが最も大切だということ。
海を渡ることができてこそ、そのメッセージがますます生きてくるのだろう。
- 2008.09.12
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