vol.3 西條 智子さん BEACH CAFE <2>Photo Album

「どうして、カフェを始めたのですか?」
ヘア&メイクとして、ベテランと呼ばれる最盛期に、仕事をセーブしたといっても、
やはり絶対量は増えるだろうし、ましてや、逗子から東京や海外への仕事も多いのだから。
撮影の仕事のある日以外は、カフェにいるとのこと。
生活のリズムは大丈夫?

そんな心配をよそに、西條さんは笑いながら、
「カフェは思ったより、ずっと大変だった。でもね、とっても新鮮なの」と
いつものゆるーい感じで答えてくれました。

「時間が不規則なヘア&メイクの仕事に比べると、ここには変わらない日々がある。
毎日同じくらいの時間に帰って、夕方、海を散歩する。
昼間に、天気がいいとか、風が吹くとか感じられる生活は、
初めての経験で、不思議な感じなんです」
確かに、この感覚は、雑誌の編集者をお休みしている私も同感。

「それに、お料理が大好きだし、
作ったものをみなさんに食べてもらえるのが嬉しいし、楽しい。
どこかの何かと比べられても困ってしまうけど、
お弁当より、あたたかいもの、くらいの感覚で食べてもらえれば・・・」

このおおらかさは、どこから来るの?
只者ではない西條さん。その半生を写真で紹介します。

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1963年、東京、葛飾柴又で、三人姉妹。
西條さん、実は二卵性双生児。
写真は、帝釈天で、シャッターを押す瞬間に、ふたごのお姉さんと
手に持ったりんごを同時に見たという、不思議な光景。
帝釈天は遊び場。参道の店はほとんどが幼馴染。

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子供の頃の写真は、自分でもどちらがどちらか見分けられない。

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昭和のお正月。ふたごちゃん、可愛い!!

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独立して、フリーのヘア&メイクになったころ。
真剣な眼差しの上に、80年代ならではの太い眉が。

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20代後半から日光アレルギーになってしまい、今は日焼けできない。
それ以前は真っ黒に日焼けしていた。仕事で訪れたセブ島で。

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トム・クルーズが、映画のキャンペーンなどで来日の際は、メイクを担当。
キャメロン・ディアスほか、外国人セレブのお仕事も。
超多忙の時期。過労で死にそうな思いをしながらも充実した日々。

一流のヘア&メイクアップアーティストから、
BEACHのCAFEまでの道のりを、西條さんに聞きました。

猫の死に教えられた、大切なこと


実は、ずっと前から、年をとったらお店をやりたいと思っていたのだとか。

小さいときから、バリバリと仕事をする人になりたくて、
憧れて、まっしぐらに夢を追い求めて手に入れたのが
「ヘア&メイクアップアーティスト」という仕事だった。
今でも好きだし、長年身についた仕事だけに、カフェを始めてからはむしろ
そっちのほうが「お休み時間」と感じられるほど、リラックスした形で仕事をこなしている。

仕事が順調に進む一方で、その道が永遠に続くわけではないことも考えていたのだとか。
ほかのH&Mさんのように、サロンを開いたり、美容専門の講師になることは
自分の人生ではないと思ったという西條さん、
「お酒が大好きで、お酒がない人生なんて考えられない。
だから、バーか飲み屋をやって、『アルコール』にかかわる仕事がいいなぁって」
(食材の表記にアルコールが書いてあるだけでも、ワクワクしてしまうというくらい、
自称「アルコール依存」症(笑))

今は仕事もあるし、飲食の仕事は50歳過ぎにできたらいいと思っていたのが、
運命の流れるままに、何年も前倒しで、飲食の道が目の前に開けた。

実は、カフェの話が出る数年前に、H&Mの仕事に、ポンと「句読点」を打つ
きっかけとなる事件が起こった。それは、21年一緒に住んでいた猫の死。
撮影の仕事が忙しくて、ストレスもたまっていた日々。
長いこと相手にする余裕もなくなっていた猫をある日抱き上げたら、驚くほど軽かった。
急いで病院に連れて行ったけれど、すでに末期的な症状。
パニックに陥り、懸命に治療をするも、その数ヵ月後に猫はこの世を去ってしまった。
3ヶ月くらいペットロスになり、さまざまな記憶が蘇ってきた。
父の死にも、祖母の死にも、仕事を休まなかったし、それが当たり前だと思っていた。
タレントやモデルはもちろん、カメラマンやスタイリストをはじめ、多くのスタッフが揃ってこそ
成り立つ仕事の世界では、そこに穴を開けることは「ありえない」こと、だと思っていた。
お正月も毎年のように仕事で海外ロケに出かけ、「いってらっしゃい」と見送ってくれるだんなさんが、
一人で年越しをしていたことに何とも思っていなかった自分に気づきハッとした。

こんな生活をしていていいのだろうか。漠然とした疑問で、頭の中がいっぱいに。

ヘア&メイクの仕事一筋で25年、初めて、仕事をしたくないと思った。

もっと家族の近くでいられる仕事。自分が休んでも、フォローしてくれる人がいる仕事・・・。
心からそんな仕事を願ったとき、「そうだ、お店を・・・」という考えが浮かび、
それから2年間、逗子、葉山の気になる飲食店を食べ歩き、リサーチをしたのだという。

仕事がら、海外ロケなどで、さまざまな国を訪れた経験から、
eat in と take out のできる店がイメージだった。

それから、しばらくの時間とさらなるリサーチの末、あるご縁から、
BEACHのクラブハウスでのカフェの話へとたどりついた。

カフェが始まってからは、想像を上回る忙しさ・・・というか、
初めてのことだから、想像がつかなくて、時間ばかりかかってしまうことも。

でも、今がとにかく充実していて、新鮮で楽しいと語る西條さん。

一流の仕事をきちんとこなしてこれた人だからこその余裕と、本来の愛情。

そのミックスで作られるランチは、BEACHのクラブハウスで過ごす時間を
よりしあわせなものにしてくれる。大切なエッセンスになりつつあります。