節分の前夜、下山口の古い小さな日本家屋では、
四畳半の居間でこたつを囲んで、鉄板焼きの宴が開かれていました。
BEACHスタッフ、MaさんとNさんも参加。
「明日は雪だから、今夜は飲んでも大丈夫かもーーー」と誰か言っていたけど、
「ほんとぉう? そんなこと言ってて、けっこう晴れちゃったりするんだよねぇ」と酔っ払いの私。
しかーし、朝起きて、びっくり。
油断しすぎていました。
チェーンも積んでいない、都会仕様の車は、可愛そうなことに葉山に置き去り。
電車で東京まで戻ることに決定しました。
丘の中腹の家は、すぐ目の前が、通常でも転ぶ友人続出の坂道。
下の家の子供がそりで楽しそうに滑るのを横目に、
とりあえずはBEACHのクラブハウスに、防水の完全武装で訪れました。
(なぜか靴だけは、コンバースのオールスターで、びしょ濡れ)
薪ストーブのたかれたクラブハウスは、雪山で遭難しそうな者にとって、
あたたかな避難所のようでした。
(ほんとうに、都会っ子は、ひ弱だなぁ)
たどり着いた、クラブハウスで、こんな可愛いシーンを発見。
雪帽子をかぶったみかんたちに、思わず顔がほころびます。
クラブハウスも、雪をかぶりました。
車を置き去りにしてでも、東京に帰らねばならない理由は、
その夜、2時起きで、栃木県佐野市の日本酒の蔵元に、
「立春朝搾り」のお酒をいただきに行くため。
旧暦では、新しい年の始まりとされた「立春」
「節分」でそれまでの一年を祓い清め、
新たな春を迎え入れる日。
高速道路が凍結と濃霧で通行止めになりつつも、
「やまねこ食堂」がいつもお世話になっている
西麻布の「長野屋酒店」のご主人、林さんの案内で蔵元に伺い、
生まれたてほやほやの縁起もののお酒、仕入れてきました。
車の中で朝日を拝みつつ、蔵元に到着。
延宝元年開業、330年以上の歴史のある「第一酒造」。
江戸末期の建物の中で、お酒造りが営まれています。
蔵の中には、神棚があり、その前に祭壇が設けられたいました。
もろみを前日より搾り続け、早朝に瓶詰めされたばかりの「開華 立春朝搾り」と共に、
蔵元ゆかりの神社のお祓いを受けます。
まだまだ、忙しそうに出荷の準備が。
昨日一晩働き続け、いまは少しだけ静かになった蔵の中を案内していただき、
日本酒の製造工程、勉強させていただきました。
お酒の原料、米を精米機にかけ「米を磨き」ます。
普通家庭で食べるお米は、米ぬかを1割削るそう。
通常、日本酒になる米は、57%を残して、つまり酒に必要のない外側の4割のぬかを削る。
それによって、すっきりとしたきれいな味わいになるとか。
今回の「開華 立春朝搾り」は、さらに53%まで磨き上げた米を使用。
仕込みのために使った米は、24時間精米にかかった。
精米機の横では、一番外側の茶色っぽいぬかから、真っ白なぬかまで、
ぬかが、「赤ぬか」「中ぬか」「白ぬか」「上白ぬか」の4種類にわけて袋詰めされていた。
左ふたつは、主に家畜の飼料や肥料に、右のふたつは、団子やせんべいに使われる。
真っ白なぬかまでを取り去ったお米は、なんだか「お姫様」のような輝きがあるような気がして、
それで出来上がるお酒に、愛おしさを感じ始めます。
大きなお釜でお米は蒸され、
35℃くらいに保たれた麹室で、麹菌によって発酵がすすみ
米のでんぷんはブドウ糖となり、その後、水を加え加熱して、
もろみ(どぶろく状態)へと仕上げられます。
すべては、趣きのあるこの蔵の中で行われています。
搾り機で、昨夜2時から今朝の7時まで、搾り続けられました。
日本酒の副産物、酒かすも香り高い。
こうして生まれた純米吟醸 生原酒 「開華 立春朝搾り」。
果物系の香りを生む、麹菌を使うことで、
口に含んだ瞬間、甘いフルーティな感覚が広がるとともに、
力強さとキレのよさを感じさせてくれる、磨かれた味わい。
なにより、生まれたての美味しさは、五感に響きます。
舌で味わう喜びのあるお酒です。
長野屋酒店の林さんが、このお酒に掛けるようにと、
丁寧に木札に名前を入れてくださって、
お酒とともに、神主さんのお祓いをしていただきました。
昨日、立春の夜に早速「やまねこ食堂」で味わってくださった方々にも、
とっても好評でした。
寒い日にあたたかな部屋で飲む、キンッと冷やした一口目がなんともいえない。
日本酒の勉強も、もっとしなくては・・・と、新たな興味が湧いてきました。
味わいはもとより、今回お目にかかった第一酒造の方々の
酒造りに向ける真摯な姿勢とあたたかさが、このお酒に対する信頼を厚くしました。
作り手の顔を見て、さらに愛着が湧くというのがとっても大切のような気がします。
RECENT COMMENTS